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フリーランス漫画家の裏日記

地下漫画家の藍が、フリーランス作家のかなしみやたのしさをちょっとぼやく。

2012年、DESEOのホールのにおいとAeLL.と、個人的な回顧録

日記

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2012年の私は、新橋でOLをしていた。
仕事は最先端のスマートフォンのことを学べて充実していたが、本社の方針で業務内容が2か月おきに変更の連続で、一度身に着けた知識や経験を社内で生かす道もあまりなくて、何より職場の発展性のない人間関係にやりがいを見いだせない時期だった。

定時で終わる事だけが続けられる唯一の理由だったが、薄給のためあまりお金のかかる遊びはできない。土日や自宅では、ローンをようやく払い終えたノートパソコンで、アイドルのPVやAKBのオンデマンド公演、映画のDVDを見る毎日だった。テレビがなかったし、アイドルをずっとみていたかった。

転職を考えると同時に、入社当初はとても好きだった職場に対してこんなにも嫌気がさしている自分にも飽き飽きしていた。
高卒でフリーターから始めて、叩き上げでキャリアを積んできた身としては、これ以上ない良い環境の大手で働けたという自負があったし、そこでの現実を目の当たりにして、これからの人生について考える契機でもあった。
こんな待遇でも、結局現実に飽き飽きしてしまう自分はたぶんサラリーマンに向いてない。なんとかして、ひとりで食べていける方法を考えなければいけない。当時の私は、ただぼんやりとしたイメージもなく、なにかクリエイティブな仕事がしたかったのだと思う。

倍率が高くなったAKBの劇場公演に当たらなくなって、完全に在宅になりつつあった私は、最近色んなアイドルが盛り上がってることを知っていたので、とにかく動画や情報をtwitterで仕入れて、調べたりブログにしたりしていた。その中で気になったのが、AeLL.だった。

ヤングアニマルによくグラビアで出ていた篠崎愛ちゃんが好きだったので、愛ちゃんがアイドルをすると聞いて、あ、行きたいな。と思った。愛ちゃんの歌ってる姿を見てみたいし、特典会で握手もできるかもしれない。

当時少しいい感じになっていたヲタク友達と、つんつべフェスに行って初めてAeLL.を見た。生の愛ちゃんと、他のメンバーの女の子も可憐で、とてもかわいくてテンションがあがった。とくにえりすは小さくて色素が薄く歌の上手いお姉さんで、それからずっと好きになった。ちなみにその時のつんつべフェスで、愛乙女☆DOLLや、BiSを初めて見た。らぶどるは握手もいったな。

AeLL.は、毎日のように渋谷のライブハウスでアイドルライブに出演していた。たくさんアイドルが出演していて、持ち時間5~15分程度のごちゃまぜライブ。rex、glad、DESEOが多かったかな。入場料も安くて、物販の単価も1000円から握手ができるので、私は気が向いたら会社帰りによく渋谷のライブハウスへ足を運んでいた。特に、DESEOは箱の形状が印象的なこともあって、初めての地下アイドルはDESEOで見たなあという気持ちでいる。AeLL.は、私にとって初めての地下アイドルだった。

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渋谷DESEO (東京都 渋谷区) - LiveWalker.com

AeLL.を追いかけてると、当時地下アイドルと呼ばれるグループは大体見ることができた。同時に、ライブハウスで観ると、女の子のポテンシャルにはそんなに大きな差はなくて、曲の完成度やステージングでメジャーっぽい雰囲気を出せる地下アイドルもいたり、私の中の「地下アイドル」というイメージはずいぶん変わった気がする。

あの頃、OLが平日の夜一人で行くような場所じゃない渋谷のハコに日がな繰り出して、出待ちしてるオタク仲間といっしょに缶チューハイを飲んだり、松屋で15分程度で済む夕食を一緒にすませたり、ドトールで机をよせあって寄せ書き色紙を作ったり、それをtwitterでシェアしたり、そういう日々がすべて新鮮で、ドキドキして、毎日新しいことを経験できる気がして、会社にいる自分は本当の自分じゃないような気がする日々を送っていた。そんな空間をくれるアイドルが本当に好きだったし、ステージの上にいるけど、少しだけ人間味を感じる近さの地下アイドルに魅力を感じていた。

私はその後、今のヲタ夫と出会って、転職して、転職に失敗して、その後いい会社にもめぐり合って、WEBで見かけた求人で応募した会社で漫画家をすることになって、今はフリーランスになった。
結構漫画家も板についてきて、アイドルと仕事でもかかわったり、かと思えば家に引きこもり続けて作業したり、極端な生活を送っているけど、あの頃欲しかった「クリエイティブな仕事をする自分」は手に入ったのかもしれない。

自分らしく生きていける道を探して手に入った今のポジションが嫌いではないし、楽しいこともたくさんあると思う。でも同時に、つらいことをストレスに感じやすく、楽しいことを前向きに受け止めにくい自分の性格にとても苦労している。この仕事は本当に浮き沈みが激しいし、創作的でいようとすると、報われないことやつらいことも多くて、毎月何かしらの出来事に涙を流している気はする。結局、サラリーマン時代と変わらないのは、自分の扱いにくさだったということに気付けただけラッキーだったかもしれない。

たまにこの仕事を辞めようかとふと思っても、実現するまで至らないのは、あの時に魅了された地下アイドルの世界に少しでも近いところにいられるからなのかな、と考えることがある。

私は地下アイドルとオタクのマンガを描いたことがきっかけで、多くの人とめぐり合うことができたし、それは私がゼロから生み出したものなんだと、こっそり励みにできることなんだと思う。そして、私の中の妄想と憧れで作り出した作品の世界を楽しんでくれるアイドルの子がたまにいて、それがとても夢のような話だなとも感じる。私は、仕事にしても、やっぱりアイドルが好きだから。

それでも心がほの暗くくすんでしまって、自信を喪失したり、自暴自棄になったり、新橋のOL時代に味わったような暗い気持ちになる時がある。でもそんなとき、2012年の自分と、AeLL.を見に渋谷へ駆け出していたころの自分を思い出す。

新しい世界を見つけたような、新鮮な感動を味わっているような、それがアイドルと繋がっている空間で、毎日なにを見つけられるのかわくわくしていた自分のときめきを思い出すと、あの頃の自分の感情に少し救われる気がしている。
私はアイドルが好きなんだ。この仕事は、そういう気持ちを昇華して仕事にできる、素晴らしい仕事じゃないか。

AeLL.はその後解散してしまい、私は色んなアイドルを見るようになって、地下のライブハウスにいくことは少なくなってしまったけど、今でも地下アイドルのいるあの空間の中で、新鮮なときめきを抱いているひとりぼっちのアラサー女のままでいる。
ずっとそうありたいなと今でも思う。

with AeLL.

with AeLL.

 


♪sp X'mas for you(スペシャルクリスマスフォー・ユー)/AeLL./20131204/